本を出す

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   昨年一冊の本『老人ホームからのブルース』を出しました。「T出版」という会社の出版部からです。始めにそれまでに書き貯めていた原稿をパソコンで編集部へ送りました。すると返事が来ました。「貴女の文は読み応えがあります。これからの高齢化社会を前にしてこれから必要と思われます。まずは出版契約をしてそれからの出版までのスケジュールを決めますから、それに従って書き進めてください。」という事でした。

   施設暮らしで自由な時間はたっぷりありましたので、空き時間にパソコンの前に座り思いつくまま書き続けました。それまでに溜まっていた事は少なくなかった。後書きにも書きましたがこれからの超高齢化社会を前に、しておきたい心の準備など、これから後に来る(団塊の世代1947~49年の)高齢者達のために先輩としてのアドヴァイスがあればとそれを書きました。自分の為というより親しい友達に当てて書いたつもりです。

   どのように編集が進んでいったかと言うと、まずこちらから原稿を送る。しばらく経って編集部からコメント・誤字のリストをもらう。その間一度も編集者とは顔を合わせる機会はありませんでした。コロナ禍ということもありました。対面作業ではないこのような編集に疑問を感じたのも事実です。Zoomでもよいので顔を見ながら話をしたかった。人は物を作る時には作者、編集者と互いの人間的な信頼と共感がなければ良い物・作品は出来ません。約月に1度のコメントだけでは編集部がどのように編集したいのかも分からず半神半疑のまま、表紙が決まり翌年3月に出版になりました。なんとなくバラバラのエッセイの寄せ集めのようになってしまいました。でも一応完成したので約4年間の私の施設暮らしの集大成と安堵し喜びました。まず手始めに施設の介護員さん達にお礼にとプレゼント。読んでくれた介護員さん達は自分の職場の空気を感じるらしく喜んでくれて「もっと書いてください」とリクエストも頂きました。ネット販売なので期待以上には売れませんでしたが私が文を書くのはまず自分のため・気持ちを落ち着けるため・施設の雑音を沈めるためで販売は目的ではないのです。ですから売れなくても構わないんですが、出来れば多くの人に読んで欲しかった。「馬場さんの本を読み、筋トレの大切さに気付きました。ジムに行くようになりました」ある友達からのメールです。嬉しかった。

    昔教師をしていた父が小学生のための教科書を作っていました。その際には編集長がおり父の仕事に全力を傾けてくれていました。ですから頻繁に我が家に来て父と打ち合わせ等をしていました。教科書の方針やスケジュールの打ち合わせ・段取り等細かく話合っていたようです。父と編集長はお互いに信頼し合っていました。父が『宮沢賢治の伝記』を書いていた頃、二人で花巻に取材旅行に行ったこともありました。父のお葬式にも真っ先に駆けつけてくれたのは彼でした。そんな人間としての信頼感に裏付けられた編集者と執筆者の有り様を期待していた私はかなりがっかりしたものです。執筆中には孤独で不安な私はモラルサポートが必要でした。最近はアナログ的な関係というよりデジタル的な関係で物事が進んでゆくようです。しかしそれに馴染めない人もいるはずです。お互いの顔の表情の見える空気の中で互いに信頼関係のある中で執筆の仕事はしたいものです。

ソムリエ@ギフト


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