自由時間がたっぷりとある高齢者が「施設での生活をエンジョイするには?」は私のテーマ。ここでは自室に籠るしかありません。新聞を取っていないので世の中のことが皆目分からなくなりがち。毎日の新聞紙が溜まるのが嫌で止めています。数種類の新聞を1か所に置いて、施設の皆が読めるようセットしてくれていた施設もありました。でもここでは諦めています。テレビのニュースで十分。
ドアの向こうの食堂には疲れ切った元気のない高齢者達がボーっと座っているだけですしお話が上手な方・好きな方なんて誰もいません。たまたまかもしれませんが皆さん何故か大人しい。口を開くのが億劫になっているようです。すなわち今ではつまらない諦めきった人達ばかり。で考えました。頭がしっかりしているのに施設暮らしを余儀なくされている人ってどこかにいるんじゃない?いるはずなんだが出会えない。以前は話すのが楽しい方がいらして面白い本をお互い紹介しあったり意見を交わしたり・・・しかしお互い目が疲れるので若い頃のようには本を読むのが楽ではなくなってきた。その代わりお互い若い頃を思い出しながらの名画(プレミアムシアター)NHKのBS午後1時~を楽しんだ。『カサブランカ』『8月の鯨』『バベットの晩餐』『戦争と平和』『聖書物語』『アラバマ物語』『ローマの休日』[小鹿物語』『黄昏』等々。
お話が面白い人は老人ホームにはおりません。施設に入るととたんに詰まらなくなるよう。現世の騒がしい所から何もない所へ来て刺激がなくなりボーッとするだけだから。やはり現世は騒がしいが刺激に満ちています。施設特有の淀んだつまらない気分を壊すためテレビを探すしかありません。
今までにテレビに「女刑事~~~」なんていたかしら?私は探偵物、刑事物が大好きなのでよくテレビを見ます。作品のプロットやキャラクターを楽しみます。ハラハラドキドキが好きなのです。もう自分の人生にはエネルギーも気力もないので、画面上で走ったり怒ったり泣いたりするわけです。危機をどう乗り越えるか?事件の動機は?因果関係は?メリハリのない毎日のある時点で事件(大体が殺人)が始まり展開し様々な人間達を巻き込んでゆく。それぞれの人生が絡みあってゆく。普通人には見えない糸を手繰り寄せ主人公は事件の真相を明らかにして事件は一件落着。我々は安堵する。退屈凌ぎでも良い。一時でも凌げたら。
この所ウィークデイの夕方の『相棒』(テレビ朝日)が面白い。主人公のモラル感(人として・・・)に共感出来るので気に入っています。責任感の欠如した悪意に満ちた現代の世相を背景に主人公は毅然としてクールにユーモアたっぷりにさりげなく事件を紐解いてゆきます。この主人公とその相棒は不思議な肩書です。警視庁警察本部の特捜班に属しており警察官でもなし、探偵でもなし、刑事でもないんです。警視庁の「特命係」(特別に命令を受けて行動する)という名称のよう。この辺も考えてみると楽しいのかも・・・大東京が舞台になって、普通では行けないビルの屋上などのロケ場面も興味深い。今では伝説になっている『名探偵ポアロ』を彷彿とさせるユーモア、お洒落なこだわり・鋭い観察眼・推理力に刺激されます。イギリス好みの主人公の服にも目がいきます。どうやら主人公専門の衣裳担当のスタイリストさんがいるようです。こんな罪のない刺激でも有難い。テレビの無かった昔のお年寄り達はさぞ寂しかっただろうし退屈だったろうに。ですから自分も推理小説でも書ければと妄想しています。『ミス・マープル』『主任警部モース』『バーナビ―警部』『神父カドフェル』等英国のミステリーは豊かでした。ふんだんに英国の風景が背景になっての軽い興奮は自分にとっては上質な一杯の紅茶でした。気分も爽快になります。
テレビは何時間でも見ることが出来ます。「いい加減にしなさい」と叱られることもありません。ただニュースを追っているだけでも世の中十分謎めいているしスリルがあります。最近は中国のスパイの話が気になります。フィリピンの山奥に突然登場した若い女村長は中国のスパイかもというニュース。中国はありとあらゆる周辺国へスパイを送っているそう。最近はアメリカ、日本、韓国、イタリアで軍事兵器を共同開発するらしい。いつ第3次大戦が始まるかもしれない。既に始まっているのかも・・・あれこれ・あちこち事件が起こっています。充分にミステリーです。何故ナタニエル(戦争犯罪人)は自分が身を挺してハマスと直接停戦交渉をし戦争を終わらせようとしないのか?世の中のことも追っているとテレビドラマよりもスリリングで面白いのかもしれないのです。年寄りは現実を変えることは出来ないが夢想は出来、夢想がかえってより良い現実になってゆくかもしれないのです。
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