私の少女時代昭和20年代の頃、「蚊帳」という家財道具があった。秋の「季語」なのだが実際は真夏の夜、殆どの家では蚊帳を吊った。上手く吊るのは私共子供には難しかった。背丈が足りなかったし蚊帳自体が重かったから・・・蚊帳の素材は木綿か麻。通気性が良く夜風が通り抜け気持ち良かった。蚊帳の中にすっぽりと包まれ隠れるのも面白かった。昔の家は今のようには気密性がなく窓から入る隙間風は親しいものだった。蚊帳を吊っておくといつの間に近くの川から飛んで来た蛍が飛び込んでいたことがあった。1匹2匹と光を放っていた。夢心地で蛍を追い、蚊帳の裾を上げて夜中にそっと逃がしたっけ。今では懐かしい風物詩である。
もう一つ忘れがたいものがある。「行水」暑い夏の風物。昔は洗濯機がなかったから洗い物をする際に「たらい」を使った。水をはりその水で洗い物をした。食器でも衣服でも盥の中ですすいだ。直径1.5センチ位の桶である。良く庭に盥を置き、水を入れておくと日中の太陽の熱で水は温まる。その盥に子供たちは裸になって入り水浴びをしたものだ。真夏の太陽を浴びながらの行水で一汗流し湯上りに浴衣を羽織るのが心地よかった。今では子供達の浴衣姿もあまり見かけない。
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